潰瘍性大腸炎とは
大腸や小腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍を起こす疾患です。発症の原因がわかっていないため根治に導く治療法がなく、厚生労働省の難病に指定されています。ただし炎症を抑える効果的な治療法があり、慎重にコントロールすることで発症以前に近い生活を送ることも可能になってきています。症状のある活動期と症状がなくなる寛解期を繰り返すため、寛解期に治ったと思って治療を中断すると悪化してしまうことが多く、継続した治療が重要です。
若い世代の発症が多い傾向がありますが、幅広い年代層に発症がみられます。似た症状を起こす疾患が多く、効果的な治療を受けるためにも消化器内科を受診して正確な鑑別を受けることが重要です。なお、潰瘍性大腸炎は難病指定されていることから難病医療費助成制度を利用することで、治療費の自己負担軽減が可能になります。
原因
発症メカニズムについてはまだわかっていないことが多いのですが、免疫が発症に関与していることはわかっています。他にも、遺伝、食事、服用している薬などの要因が関与していると考えられています。
症状
主な症状は腹痛、下痢、血便であり、粘液と血液が混じった粘血便も多くなっています。また、こうした症状がほとんどなく、急な体重減少や貧血によって発見されることもあります。
症状はクローン病、感染症の細菌性赤痢やサルモネラ腸炎などとも共通しているため、正確な診断と適切な治療のためには消化器内科を受診して専門医の診療を受けることが不可欠です。特にクローン病は症状のある時期とない時期を繰り返すといった部分も共通しており、食事制限や栄養療法など異なる治療が必要になることも多いため、正確な診断が重要になってきます。
潰瘍性大腸炎症状が似ている疾患
クローン病
症状の多くが共通しており、症状のある活動期・ない寛解期を繰り返すといった部分も同様で、クローン病も難病指定されています。潰瘍性大腸炎は主に小腸や大腸に炎症や潰瘍を生じますが、クローン病は口から肛門までという消化管全域に病変を生じるという部分が異なります。クローン病は食事制限や栄養療法が必要な場合があります。適切な治療を受けて状態を落ち着かせるためにも、正確な診断を受けることが重要です。
細菌性赤痢
赤痢菌に感染し、数日の潜伏期間を経て、下痢・腹痛・発熱などの症状を起こします。海外で感染して日本で発症することが多いため、発症前の海外渡航歴を確認することでスムーズな診断につながることがよくあります。ただし、感染者からうつる二次感染や汚染された食品による感染の可能性がありますので、慎重に調べる必要があります。
サルモネラ腸炎
鶏卵や肉類など、サルモネラに汚染された食品を口にして感染し、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、発熱などの症状を起こします。ペットからの感染も報告されたことがあります。
検査・診断
問診で症状をお伺いしたうえで、海外渡航歴や、ご家族など周囲で同じ症状がある方がいないかなども確認します。血液検査、腹部X線検査、便培養検査、大腸カメラ検査などから必要な検査を行って診断します。
潰瘍性大腸炎の確定診断には、特有の病変を確認でき、病変の組織を採取して病理検査も可能な大腸カメラ検査が不可欠です。大腸カメラ検査では炎症や潰瘍の状態、範囲を詳細に把握できますので、適切な治療につながります。
診断基準
腹痛・下痢・血便などの症状、大腸カメラ検査の所見や採取した組織の病理検査などにより診断します。特に重要なのは、感染性腸炎・クローン病・薬剤性大腸炎などとの鑑別です。
潰瘍性大腸炎の治療法
症状を改善して、症状のない寛解期をできるだけ長く続ける治療を行います。寛解期にも継続して治療を続けないと再燃して再び活動期に入ってしまうため、治療を継続して状態をコントロールすることが重要です。処方は、5-アミノサリチル酸製剤を中心に、炎症が強い時期には炎症を鎮める効果の高いステロイドを短期間使用して状態を改善に導きます。また、免疫調節薬、抗TNF-α抗体である生物学的製剤、抗菌薬などを使った治療が行われることもあります。
難病医療費助成制度について
潰瘍性大腸炎は根治に導く治療法がなく、厚生労働省の難病指定を受けており、医療費助成制度を利用することができます。国が定めた診断基準と重症度分類によって判断され、助成対象になった場合には、治療費用の負担割合が下がったり、上限ができたりすることで医療費の負担を軽減できます。重症度が軽度の場合も長期間の治療が必要な場合には、軽症高額該当の医療費助成を利用できることがあります。
重症度分類
難病医療費助成制度を利用するためには、国が定めた診断基準と重症度分類による判断が必要になります。重症度は重症・中等症・軽症があり、排便回数・顕血便・発熱・頻脈・貧血・赤沈という6項目を調べることで分けられます。あくまでも目安ですが、排便回数が4回以下、血便はないか少量、発熱・頻脈貧血・赤沈は正常という場合は軽症、排便が6回以上、血便は大部分が血液、発熱か頻脈があり、6項目の4項目に当てはまる場合は重症であり、軽症と重症の間が中等症とされ、重症で症状が激しい場合は劇症とされます。実際には、それぞれ数値が決まっていて、それによって判断されます。
難病医療費助成制度の対象となるのは、重症度分類で中等症以上と診断された場合です。
ただし、軽症でも長期間の治療が必要な場合には、軽症高額該当として医療費助成が受けられることがあります。